【2025-③】「労働協約がない」その理由は単純だった
前に、「【2025-②】会社のルールは『協約』が基礎」という投稿の中で、「会社のルールは労働協約を基礎に決められている」「みなさんの会社に労働協約はありますか」という内容を記載しました。
いかがでしょうか。社内のどこかに、労働協約なるモノはあったでしょうか。
会社によっては、そもそも存在していないかもしれませんね。
労働協約は就業規則と違って、作成することが法律で義務付けられていません。
「会社のルールは労働協約を基礎に決められている」と言われているくらいに重要なのに、会社によっては存在していない。
なぜそのようなことがあるのか。
どのようなときに作られ、「重要な基礎」として会社に鎮座するのか。
今回はそのあたりのことを、私なりにまとめてみます。
目次
1 確固とした存在
2 「必須ではない」
3 まとめ
1 確固とした存在
前の記事でも登場した「労働協約」。
見慣れない言葉であるため、唐突に現れた印象があったと思います。
このときの記事では、「労働協約は労働基準法の条文で登場する用語である」と説明しました。
しかし、実はもっと大もとの、そもそもの出発点の法律条文があります。
順序が逆になりましたが、今回はそれを紹介します。
●労働組合法
第3章 労働協約
(労働協約の効力の発生)
第14条
労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。
このように、労働協約は固有名称を持ち、法律のひとつの章として定められている、かなり確固とした存在であることがわかります。
名称にいかめしい印象があるのは、それが日常の用語ではなく、法律の中の存在だったからなんですね。
この条文からわかることは、
・労働組合と会社が締結するもの
・労働条件を定めるもの
・両者の署名と押印で効力を持つもの
です。
法律ではこのほかに、
・有効期間は3年以内であること(15条)
・内容に違反する労働契約は無効であること(16条)
などが定められています。
法律でこれらの効力を保証されている労働協約は、まさに「会社のルールの基礎」。
会社が作った就業規則を上回る強力な力を持つ存在であることもうなずけます。
2 「必須ではない」
労働協約の存在の根拠がわかったところで、最初の話題に関連付けてみます。
法律からわかることは、ふたつ。
ひとつめ。
労働協約は、労働組合と会社が締結するもの
その会社に、労働組合がなければそもそも作られません。
「ウチの会社、協約がない!」という方の会社には、労働組合はあるでしょうか。
協約は、組合ではない個人が締結することはできないのです。
ふたつめ。
労働協約は、「締結が必須ではない」
これについては、私も長年、認識していませんでした。
労働組合に身を置いていた私はずっと、「組合は協約を結ぶものだ」という前提で活動していたからです。
けれど、法律中では「締結しなければならない」という義務は定められていません。
締結の方法や、締結した場合の効力が設定されているのみ。
つまり、その会社に労働組合があっても作成されない場合があるということです。
「ウチの会社には組合があるのに、協約がない!」という方には、このような事情が考えられます。
この事例は稀だとは思いますが、労働協約を締結しない労働組合があっても、おかしなことではありません。
「会社のルールの基礎」と位置付けられていながら、会社によっては存在すらしていないことがある、労働協約。
法律で作成が義務付けられている就業規則と違って(一部を除く)、作成が任意とされていることが、会社によって存在しない理由のひとつではないでしょうか。
3 まとめ
労働協約は、法律の中でその存在と効力が明記された、確固たる規範です。
この規範が会社のルールとして効力を持つのは、会社と労働組合が合意して協約を締結したとき。
・法律上、労働協約の作成は「必須とされていない」
・労働協約は、会社と労働組合が合意したときに作成される
今回の記事では私も自分の認識をあらためて見直すことになりました。
「労働協約の締結には法律上の義務はない」という事実。
労働組合の役員を務めていた私には、新鮮に感じます。
とはいえ、
「締結は必須ではない」
↓
「締結しなくてよい」
ではありません。
労働組合には、会社と労働協約を結ぶ権利と能力が法律により授けられています。
労働協約を「義務」ではなく「権利」として、会社の安定したルール作りのために生かしてほしいと思います。
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