神奈川県大和市の社労士事務所 中野屋│労働問題の解決PRO

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【2025-④】どのように力を持つのか 労働協約の成立まで

以前の投稿「【2025-③】『労働協約がない』その理由は単純だった」では、社内で労働協約が作られない場合の理由を私なりにまとめました。

 

今回は、この強力な労働協約がどのようなときに作られて、会社のルールとして存在するのか。

作成から締結までを、私なりに考えてみたいと思います。

 

これから労働協約を作ろうと考えている労働組合や、または会社の経営者のみなさんがこの考えを手がかりに生かしてくれれば嬉しいです。

 

 

目次

1 平和のための統一

2 確認できるように

3 成立させる「儀式」

4 まとめ

 

 

1 平和のための統一

 

労働協約の作成・締結の手順は、大まかに分けると次の通りです。

本項では「①条文の作成」に触れます。

 

① 条文の作成

② 条文の製本化

③ 締結の儀式

 

【2025-③】で紹介したように、労働協約は会社と労働組合が労働条件等を記載した文書に署名・押印したときに効力が生じます(言いかえると、ここで作成・締結されます)。

 

上記の「労働条件等」とは、その会社で働くときの「働き方のルール」といえます。

・勤務時間

・休日、休憩

・賃金

・有給休暇

・労働災害の補償

・安全衛生

など・・・

 

これらの働くときの条件について、会社側と従業員側(労働組合)が「この条件で働きます」と合意して作られるのが、労働協約です。

協約が締結されたら、有効期間内の労働条件は、この協約の内容に設定されます。

 

これらの労働条件は、「就業規則と同一の内容」ということが基本です。

「就業規則は労働協約に反してはならない」ですからね。あまりに乖離した条文では、法律に牴触してしまいます。

 

就業規則に含まれていないけれど、労働協約に含まれている事項といえば、労働組合に関する条文でしょうか。

・会社と労働組合の、お互いの地位の確認

・組合専従者の地位・待遇の確認

・労使協議会等の開催要件

・苦情・紛争の取り扱い

など・・・

 

会社と労働組合が「合意をして」設定された労働条件ですから、労使の地位が対等であることを確認する条項が丁寧に含まれていることでしょう。

この点は、会社が自分の意思のみで作成できる就業規則とは異なるところです。

 

これら労働組合に関する事項は、就業規則と異なっていても問題がない部分です。

労使の合意にて、自由に設定することができるとされています。

 

新しく労働協約を作成するときに、一番時間がかかるのはこれら労使関係の条項かもしれません。

社内の治安維持にかかわる条文になるため、会社と組合がふだんから対決基調だと、この部分の設定に難航することが考えられます。

 

社内の労働条件を統一させ、社内の平和を保つための労働協約ですから、会社と組合はよく話し合い、歩み寄って設定することが安定した経営への第一歩です。

 

 

2 確認できるように

 

次に、「②条文の製本化」に触れます。

 

① 条文の作成

② 条文の製本化

③ 締結の儀式

 

法律では書面のかたちまでは言及されていませんが、途中で書き換えや改竄がされないように、厳重な管理ができる作成が望まれます。

 

重要な契約の際に作られる契約書と同じです。

製本テープを用いた袋綴じや、ページの中央に契印を押すなどの手法が多く取られるでしょう。

 

そして、全く同じものを2部作ります。

会社側と労働組合側がそれぞれ所有し、お互いが現在の労働条件を確認できるようにします。

 

労働協約は労使の合意による契約であり、労働条件として従業員の働き方に直結します。

「会社内の法律」ともいえるため、誰でもいつでも確認できる、物理的な存在に作っておく必要があります。

作成した条文の製本に労使の代表者の署名と押印が必須とされているのは、そのあたりの事情があるものと思います。

 

 

3 成立させる「儀式」

 

① 条文の作成

② 条文の製本化

③ 締結の儀式

 

労働協約には有効期限が設けられます。

上限は3年間ですが、通常は1年間でしょうか。

 

会社の年度に合わせて、毎年4月1日から一年間。

組合の年度に合わせて、毎年9月1日から一年間。

年の初日に合わせて、毎年1月1日から一年間。

 

期間の区切りは自由に設定できます。

上記のような期間を定めて、その始期の直前に労使で署名と押印を行い、労働協約が成立します。

 

すでに協約が運用されている会社では、毎回の期間満了のたびにこのような「儀式」が行われていることでしょう。

労働協約の締結は、労使の最上位の契約ですからね。特に労働組合としては意気を込める瞬間ではないでしょうか。

 

たとえ、労働協約の洗練が進んで完成度が高まっていて、毎回機械的に更新されていても、その署名と押印によって会社のルールが決められるということを、お忘れなく。

 

 

4 まとめ

 

今、みなさんの会社の中にある労働協約も、このような過程を経て作られているでしょう。

このような手順を経て作られた労働協約は、会社が作る就業規則よりも優先される効力を持ち、会社のルールの基礎として社内に鎮座します。

 

働く私たちにとって、勤務している一日の中でこのようなことに思いを巡らせることはめったにないでしょうか。

一年のうち、会社の働くルールが改正されたり、賃金が引き上げられるなど、労働条件が見直される時期があると思います。

 

そんなときには、「協約も見直されたのかな?」と、考えてみてください。

 

自分の働き方がどのように決められているのかを自分で知ることは、安心した勤労のための一歩ですよ。

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