神奈川県大和市の社労士事務所 中野屋│労働問題の解決PRO

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【2026-②】陰の主役「衛生」 働くために欠かせない「衛生」の概念とは

「安全第一」

「安全なくして労働なし」

「今日も一日ご安全に」

 

SafetyFirstの精神はどんな仕事でも、誰にとっても最重要で、例外はありません。

「労働安全衛生法」という、安全第一の精神の象徴である法律が労働基準法から分離独立(1972年)して現在まで50年以上、働く現場ではこの精神が大切に守られてきました。

 

あなたは、冒頭の三つの標語を読んだときに、どのような光景が想像されましたか?

どのような場所で、このような言葉が生かされると感じたでしょうか。

 

今回はちょっと変化球。

「安全第一」の標語の陰に隠れてあまり注目されることのない、「衛生」について取り上げてみます。

 

安全衛生の「衛生」が、ふだんの私たちの働き方にどのように関わってくるのか。

なぜ「安全」だけでなく、「衛生」も必要とされているのか。

 

この記事を読んで、あなたがその職場を見つめなおし、働きやすい職場を作るきっかけになってくれたら幸いです。

 

 

目次

1 「衛生」という言葉が持つ意味

2 衛生は「働くための基本事項」

3 まとめ

 

 

1 「衛生」という言葉が持つ意味

 

一般的な「衛生」

 

「衛生」とは、一般的な意味と労働分野での意味が異なる言葉です。

日常生活では、出番は少なくない単語かな、と私は感じています。

 

「直接手が触れないので、とっても衛生的!」

「使い終わったあと放置されて、不衛生だ」

「水害により、周辺の衛生状態が悪化している」

 

ふだんの生活でも、このようなかたちで登場することは珍しくないでしょう。

このような使い方の場合、「衛生」が含む意味は次のようになると思います。

 

【衛生】(一般的な意味)

生命や健康を守るために、清潔を維持すること

 

おおむね、どの辞書にもこのような意味・趣旨が記載されているでしょうか。

さらに深く調べると「精神衛生上よくない!」という使い方や、「『清潔=衛生的』とは限らないぞ!」という概念もあるので、実は奥が深い言葉でもあります。

 

生を衛る(いのちをまもる)と書きますから、読んで字の如く、ですね。

 

働く上での「衛生」

 

これが、労働安全衛生の分野では言葉の持つ意味が変わります。

どんな意味を持つと思います?

 

「有機溶剤を吸い込まないように、防毒マスクを使う」

「病原菌やウイルスに触れないように、手袋を使う」

「良好な作業環境を維持するために、効率的に換気を行う」

 

上記の行動はどれも、衛生を保つための一環です。実際に、日々気を付けている職場や人も多いことでしょう。

が、「これだけではない」というのが、この言葉の奥深く幅広いところです。

 

まず、労働安全衛生法には、衛生の定義はありません。

 

労働安全衛生法は、第2条で用語の定義を定めていますが、「衛生」の定義はここでは定められていないのです。

(同じく、「安全」も定義されていません)

 

この法律で衛生とは、辞書で引いて調べがつくような意味を持った言葉として扱わず、快適に働くためのひとつの概念として定められていると、私は考えています。

 

なので、働く上での衛生の意味は、衛生について規定しているその他の条文からたどって、総合的な趣旨としてとらえることになります。

 

衛生について定めているのは主に、

 

  • 衛生管理者(第12条)
  • 衛生委員会(第18条)
  • 作業環境測定(第65条)
  • 健康診断(第66条)
  • 健康教育(第69条、70条)
  • 快適な職場づくり(第71条)

 

です。

衛生の概念は、この法律全体に細かく散りばめられています。

これらの条文に目を通してみると、働く上での衛生が何を指し、何を求めているのかがつかめるでしょう。

そうして見えてきた概念が、この法律での「衛生」の意味です。

 

言葉単独での定義がないので、ひと言で説明するのが難しい。

「安全」に比べて「衛生」が一般的に認知されていないのは、そういった性質が理由かもしれません。

 

 

2 衛生は「働くための基本事項」

 

前項で、働く上での衛生とは快適に働くためのひとつの概念である、と説明しました。

それを示す条文もたくさん列挙しました。

 

でも、列挙しただけで、説明があまり具体的ではありませんでしたね。

ここではもう少し具体性を持って、衛生と働き方との関係を示してみます。

 

働き方とのかかわり

 

前出の「衛生委員会(第18条)」では、この委員会で行うべき付議事項が全部で12項も定められています。

有害性の調査や衛生教育の実施など、衛生委員会の本分に当たる事項がある一方で、以下のことも含まれています。

  • 健康診断の結果に基づいた対策
  • 長時間労働防止のための対策
  • 精神的健康を図るための対策

 

衛生委員会と一対の関係にある「安全委員会(第17条)」の付議事項には、これらの項目は含まれていません。

 

つまり、健康診断・長時間労働・精神的健康(メンタルヘルス)は、衛生で扱う分野だということです。

 

いかがです?

こうして聞くと、衛生が一気に身近な存在に感じませんか?

 

オーバーワークやハラスメント、それに伴うメンタルヘルス。

現代の労働トラブルや労使紛争の主な原因が、衛生委員会で議論する対象として法律や施行規則で設定されているのです。

 

しかも、衛生委員会には産業医も出席することになっています。

これも、安全委員会とは異なる点です。

(安全委員会には、産業医の出席は義務付けられていません)

 

医学の視点が加わるという点でも、この委員会で扱う内容が働く上で重要であることを示しています。

 

衛生とは、マスクや手袋や換気装置で対策を取ることよりも、もっともっと根源的な要素を含んだ概念です。

長時間労働やメンタルヘルスへの対策は、働くことへの基本事項といえるでしょう。

 

医学の知見の助けも借りながら、これらの基本的な対策を委員会の中で考えていく。

事業者が考えるべき「衛生」をもう少し具体的に表すと、以上のようになります。

 

「労働衛生の三管理」

 

初めてこの言葉に触れる人も多いでしょうか。

衛生という言葉以上に一般的ではない、「労働衛生の三管理」という考え方。

ふだん、職場の安全衛生を担当している人や、安全衛生委員会の委員であっても、この言葉に接することは稀だと思います。

 

とはいっても、この言葉が意味することは難解ではありません。

安全衛生に関してあなたがいつも取り組んでいること、考えていることと強く関連しているので、基本を理解していれば、この概念もすぐに取り込めるでしょう。

 

詳細な解説は他に任せるとして、より実務的な労働衛生の三管理とは以下のことを指します。

 

  • ・作業環境管理
  • 職場の空気・温度・照度・騒音など、環境そのものを整えること
  • ・作業管理
  • 働き方そのものを安全・健康的にすること
  • ・健康管理
  • 労働者の心身の状態を把握し、健康を守ること

 

「労働衛生」と聞くと、粉塵や騒音、有機溶剤などが連想され、ものづくりの現場や工場で活用される考え方ととらえがちです。

でも、上記のように言葉を整理して並べると、どれも広く関連するように感じませんか?

 

特に、温度(暑さ寒さ)や照度(明るい暗い)は、どの業種、どの職場であっても、必ずと言えるほどに重要です。

いくら身体への負担が小さい事務職であっても、薄暗くて底冷えするオフィスで一日仕事に従事せざるを得なければ、それは「労働衛生が守られていない」という状況なのです。

 

職場の衛生を維持するための対策は、難解であったり高度である必要はありません。

「健康で働くにはどうすればよいか」という視点で考えることが第一歩になります。

三管理は、そのための三つの視点です。

 

会社の中で「衛生」を考えるとき、重視する職場と深い検討をしない職場に分けられることがあります。

生産の現場は手厚く検討、事務職場はそもそも検討されない、などの区別です。

 

けれど、三管理の視点で職場を見れば、どの職種でも衛生が欠かせないことは明らかです。

職種によって重要度が異なるだけで、手を抜いて良いわけではありません。

 

簡単な、基本的な視点でも良いのです。

もし、あなたの会社で衛生の維持が十分でない職場があると感じたら、上記の三管理の視点であらためて職場の状態を見直してください。

 

多額の費用も新たな設備も使うことなく、働きやすい職場に生まれ変わるかもしれませんよ。

 

 

3 まとめ

 

「安全第一」

「安全なくして労働なし」

「今日も一日ご安全に」

 

これらの言葉を読んだときに、まず想像するのは製造業や建設業の職場でしょうか。

ヘルメットをかぶって工具を持ち、作業着を身に着けた人たちが働く「現場(げんば)」で、これらが標語として掲げられる。

 

「安全第一」が持つ一般的なイメージとして、正統だと思います。

 

今回の記事では、「衛生」について私の考えを示しました。

私の考えでは、労働安全衛生が関連するのは、製造業や建設業など体を使う業種だけにはとどまりません。

 

医療や食品など、清潔が特に必要とされる業種にとどまるものでもありません。

 

  • 「衛生」とは、健康を守るための概念・考え方
  • 衛生の概念は、業種や仕事内容に関わらず取り入れられる
  • 職場の衛生を維持するには、長時間労働・メンタルヘルス・健康障害への対策が欠かせない
  • 「労働衛生の三管理」の視点で、職場の衛生の維持を考える

 

これらの考え方や取り組みは、どのような業種でも関係します。

一定の規模要件はありますが(50人以上の労働者を常時雇用など)、現実には人が働くすべての会社で必要な取り組みと言っても、言い過ぎではないでしょう。

 

安全衛生とは、人が健康的に働く職場を作ることです。

 

働く人が全員で、健康を守る視点で職場を見直せば、安全で衛生的な職場を作れます。

事業者は、暑さ寒さや明るさに気を配り、体に負担のない働き方を工夫しましょう。

 

そして、人を大切にする経営の基盤を作っていってください。

 

【関連ページ】

安全な職場づくり

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