【2026-⑨】罰則の対象は熱中症だけにあらず! 幅広い安全衛生の罰則対象への対策
2025年6月1日から、「熱中症対策の義務化」が始まりました。
近年の度を越えた酷暑への対策は、産業・労働の分野では必須といえます。
経営者と働くみなさんは、今回の施行規則に沿った行動を取って、従業員・ご自身の体を守ってください。
この「熱中症対策の義務化」は正確に示すと、「労働安全衛生規則第612条の2(熱中症を生ずるおそれのある作業)の新設」となります。
この規則にはもともと数多くの危険・有害な状況とその対策が定められています。
今回の改正では、新たに「熱中症」と特定して規則に追加したことになるのです。
この熱中症対策の施行が近づいた時期に産業界では、「罰則付きで」という言葉が付け加えられて語られることが増えました。
私の周りではほぼ全員が、この改正の重要性を強調する趣旨で「罰則付きで」という言葉をつけて話していたことを記憶しています。
インターネット上でも数多く踊る「熱中症対策が罰則付きで義務化!」という言葉。
安全衛生の罰則がにわかに注目され、多くの人が意識を向けた出来事だったと思います。
熱中症からは季節外れではありますが(執筆時点は2026年2月!)、この改正をきっかけとして今回は労働安全衛生法の罰則について考えてみたいと思います。
- 労働安全衛生法にも罰則があるの?
- 何をすると罰を受けるの?
- 経営上、注意するべき罰則は何か。
今回の記事をきっかけに、職場の安全衛生を整えてくれれば幸いです。
目次
1 名指しされた熱中症
2 広範囲にわたる対象
3 まとめ
1 名指しされた熱中症
労働安全衛生法とその施行規則は条数が膨大で、その分、罰則の対象も数えきれないほどあります。
拘禁刑や罰金刑も多岐にわたるので、今回は熱中症対策から派生した話題に限ろうと思います。
「熱中症対策が罰則付きで義務化」と語られるのはなぜか。
それは、法119条が根拠であると思われます。
法119条は、安全衛生に関する罰則を定めた条文です。
労働安全衛生法第119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
- ・・・(略)第20条から第25条まで、(略)・・・
罰則の対象となるたくさんの条文のうち、法22条にはこうあります。
法第22条
事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
- (略)
- 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
- (略)
- (略)
さらに、法の条文にある「高温」を、施行規則の中で具体的に定めています。
熱中症が名指しされているのは、この施行規則の中です。
規則第612条の2(熱中症を生ずるおそれのある作業)
事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、・・・体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。
今回の改正で上記の規則が新設されたことにより、「熱中症の対策を怠ると罰則の対象となる」と解釈されるようになった、と私は考えています。
安全衛生規則は、対象となる作業や状況を具体的に定めているため、条数が600を超えています。
世の中の仕事の数だけ条文がある、と思えるくらいです。
規則の中には、危険な作業を定めた「安全基準(土木、建設など)」と、有害な状況を定めた「衛生基準(環境、休養、食堂など)」の編が含まれています。
それぞれについて、かなり詳細に規定されているので、ご自身の業界の規定について、一度読んでみてください。
思っていたより面白いので、私は結構引き込まれて読み込んでしまいます。
今回、「暑熱の環境」から熱中症が単独で規定化されたということは、それだけ重点的な対策を要しているということです。
生命にかかわる安全衛生の課題ととらえて、事業者として確実に対応しましょう。
2 広範囲にわたる対象
安全衛生に関する罰則は、法律により数多く設定されていることは、上記のとおりです。
ということは。
罰則の対象は、熱中症に限らないことになります。
今回の改正で熱中症対策が追加される前から、労働安全衛生法は暑熱・寒冷をはじめとした労働環境を事業者(会社)が整備するよう定めています。
そして、それら事業者が講ずるべき措置に違反があった場合には、罰則の規定が適用されることになっています。
上記では法22条の条文の一部を省略しましたが、あらためて全部を記載すると以下のようになります。
法第22条
事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
- 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
- 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
- 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
- 排気、排液又は残さい物による健康障害
この条だけでもこんなにあります。
他の20条や23条まで含めれば、事業者が講ずるべき措置がいかに広範囲にわたるかがわかるでしょう。
これらはみな、違反があれば罰則の対象となり得ます。
熱中症対策で「罰則付き」がにわかに注目されましたが、今に始まったことではないのです。
特に、衛生に関する措置は範囲や種類が広大です。
社内のあらゆる環境がその対象になり得ると考えてください。
違反したら即罰則、とはならないと思いますが、それが悪質な場合は思わぬことで処罰される可能性があるのが、安全衛生です。
今回の改正で罰則が注目されたことを機に、会社の中を見直してみるべきかもしれません。
「これは違反ではないか?」という目で職場を見渡すと、今まで何も感じなかった景色が、違って見えてきますよ。
3 まとめ
今回は、施行規則の改正で注目された、安全衛生に関する罰則について考察してみました。
今回この記事で紹介したのは、労働安全衛生法が定める罰則の、ほんの一部です。
他にもたくさん、数えきれないほどの行為が処罰の対象に設定されています。
- 罰則の対象は熱中症だけではない。法律により、広く対象が設定されている。
- 対象となる作業・状態は施行規則に定められている。「安全基準」「衛生基準」を確認。
- 社内のあらゆる環境が罰則の対象になり得る。いま一度、社内の点検をしましょう。
安全衛生の対策や環境づくりは範囲が広く、明確な正解がない場合があって、経営者にとっては雲をつかむような曖昧な世界に思えるでしょう。
「社内を安全に作り変えたいけれど、どこから手を付ければよいかわからない・・・」
そうして迷っている経営者、担当部署は多いと想像します。
そうして迷ったときは、それが「処罰の対象になるかどうか」の視点で考えてみましょう。
もし、その状態を放置して労働災害が起きたとき、会社の責任が追及されて、罰を受ける可能性を感じたら。
それは対策を講じるべき状態と言えます。
労働災害が起きて、人的・経済的な損失が出る前に、具体的な手を打つのが賢明です。
最後にもうひとつ、労働安全衛生法の条文を取り上げます。
法第26条
労働者は、事業者が第20条から第25条まで及び前条第1項の規定(労働災害時の救護)に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。
会社で働く労働者、あなたにも、安全衛生のために義務を負っていることをお忘れなく。
安全な職場づくりは、会社と従業員、両者が協力して成り立つものです。
全員が働きやすい会社を作るため、ご協力をよろしくお願いします。
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