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【2026-⑫】安全衛生の定番 「注意喚起」で労災を防げるか!? 

「注意喚起」とは、「相手の注意力を呼び起こす」という意味で使われます。

日常の中では言葉よりも文章で出番が多いでしょうか。

 

どのような文章で出番があるかというと、やはり安全衛生の分野で登場することが多いです。

会社内や作業現場にある安全衛生関連の表示には、何かしらの「注意喚起」が含まれているのではないでしょうか。

 

そして、ひとたび労働災害が発生したら、その登場率はほぼ10割。

「作業者に対する注意喚起に努める」という文言は、労働災害の是正対策には欠かせない要素となっています。

 

  • 注意喚起とはそんなに重要なのか?
  • 何に対して注意を喚起すればよいのか。
  • 注意喚起で事故や労働災害を減らせるのか?

 

今回は、安全衛生における「注意喚起」という概念とその扱い方について考えます。

 

安全な職場づくりの一助に生かしてくれれば幸いです。

 

 

目次

1 注意を喚起する効果

2 後からなら何とでも言える

3 まとめ

 

 

1 注意を喚起する効果

 

はじめに。

 

注意喚起に効果はない

 

というのが、私の考えです。

この表現だけだと端的すぎるのでもう少し付け足すと、

 

労働災害の対策として、再発防止のための注意喚起に、実質的な効果はない。

 

になります。

いくつか理由を申し上げます。

 

理由① 気づかない

いくら注意を払っていても、気づかないものは気づかないです。

 

労働災害や事故が起きる前、本人は自分が今、危険な状況にあることを自覚していないことがほとんど。

現状の危険を認識せず、そのまま危険行動を続けるから労働災害につながっていきます。

 

本人が何も危険だと思っていない平常の状態で、一体何に注意を向ければよいのでしょうか。

何に注意してよいかわからないし、注意を払っていても気づくとは限りません。

 

これは「まちがいさがし」の感覚と似ています。

いくら注意深く二つの絵を見比べても、間違っている部分を見つけ出すことは容易ではない。

はじめから「まちがいが5こあるよ!」と、個数まで知らされているのに、すべてを見つけられないことだってあるくらいです。

 

危険を感知していないならなおのこと。

他人から言いつけられた注意喚起で気づくことなど、わずかでしょう。

 

理由② 個人の限界

個人の注意で災害を避けることにも限界があります。

 

労働災害は、職場の複数の危険が組み合わさって生じます。

被災者本人の行動のみで負傷に至る災害は少ないでしょう。

 

労働災害の原因として少ない割合しか占めていない個人の行動にいくら注意を払っても、それで防げる危険も少ない割合にとどまります。

 

「車の燃費向上のために」と、丁寧に加速・減速する燃費走行を心がけていても、車両側に問題が多く存在していれば、燃費走行は望めません。

タイヤが古くて空気圧が低い、オイル類が劣化している、過積載で車体が重い、減速比が高すぎて常に高回転、エンジンが大排気量など、燃料消費率を悪化させている複数の原因を改善してこそ燃費走行は実現できます。

 

個人の注意や努力のみで排除できる危険は限られていて、その割合はわずかです。

労働災害を回避できる水準には至りません。

 

理由③ 思考停止

「注意喚起」という言葉が登場すると、人間の思考はそこで停止します。

是正対策の検討が、その先に進まなくなるのです。

 

本当は、現場の中に多くある労働災害の原因を解消して、危険な状態を改善することが根本的な対策です。

それには大きな変化が伴うので、様々な知恵を出し合って、色々な切り口で検討を進めることになります。

 

今ある仕事を損ねることなく、より安全な状態を作れないか。

会社にとっては難題でしょう。大きな労力を要するに違いありません。

 

注意喚起という対策は、この苦しい検討を止めてしまいます。

本来、会社や職場単位で考えるべきことを、個人の努力に依拠してしまうからです。

 

職場単位の根本的な対策がいくつか取られた上で、訓示的に「注意喚起」を付すことはアリだと思います。

それら根本の対策なしに、労働災害を回避する本命として注意喚起を設定するのは、会社として責務の放棄、債務不履行、従業員に対して不誠実です。

【関連ページ】

【2026-⑩】経営の難題「安全配慮義務」 その正体と限界を知る

 

会社として職場の危険を排除したければ、考えを止めてはいけません。

安全のための知恵は、他人から借りてでも出しましょう。

くり返しますが、個人の注意や努力で防げる危険はわずかしかないのです。

 

 

2 後からなら何とでも言える

 

「○○に注意していれば労災にならなかったはずだ!」

 

是正対策を検討していると、途中でこのように感じることはあるでしょう。

 

労働災害の原因となる危険な状態と行動が明らかになるにつれて、それを防ぐ手立ても発案されていきます。

と同時に、「なぜ防げずに発生してしまったのだろう?」とも思うようになります。

「こんな単純な原因なのに」、と。

 

労働災害という結果が出た後に、

  • 「○○になるのは当然だろう」
  • 「○○しておけば良かったのだ」
  • 「だから○○と言っただろう」

などと思ってしまうのは、禁物です。

結果が出た後なら何を言うのも簡単だし、そんなことを考えても何も生まれません。

 

人間は、何か結果が出た後に、その結果に基づいて原因をさかのぼって考えるクセがあります。

「後知恵バイアス」という心理状態が関連しているのですが、ここでは詳述しません。

 

特に労働災害という、鮮烈で明確な現象が起こると、「こうなることは予測できたはず」と捉えがちです。

結果が明確だと原因も単純だと考え、予測して防ぐことも可能だったと思ってしまうのです。

 

この後知恵が、各自の注意喚起に傾倒する一因になります。

 

そして、真の原因を追究する歩みを止めてしまいます。

人間は苦しい検討を続けているとき、何か答えを見つけると安心して考えるのをやめてしまいます。

 

けれど、後知恵で見つけた答えなど、出来損ないです。

それで真の原因は解消されません。

後知恵で安心しないでください。

 

安全衛生においては、必ず複数の人間で同じ事象を検討しましょう。

例えば3人で対策を検討しているときに、3人全員が同じ時点で後知恵に納得することは考えにくく、誰かが現実に引き戻してくれる可能性が高まります。

 

労働災害の対策の検討で、一度出た解決策に納得しかかったら、そこで落ち着いて疑ってください。

もしかしたら、かなり手前で検討を打ち切っているかもしれません。

 

 

3 まとめ

 

仕事を進める上で、危険に対して注意を払うことは必要です。

危険を避け、安全に仕事を行うには、各自の注意が欠かせません。

 

だから、労働災害の是正対策で「注意を喚起する」という内容が不要だとは申しません。

重要なのは、注意喚起だけで安全を確保できると期待しないことです。

 

  • いくら注意しても気づかない危険がある。人間は、平常時には危険を認知していない。
  • 個人の注意や努力で避けられる危険はごくわずか。職場の危険の排除を主眼に考える。
  • 各自への注意喚起は個人への依拠。職場として責任をもって安全確保に努める。
  • 安全衛生において、「後知恵」は禁物。安易な解決策に安心せず、真因に至るまで検討を深める。

 

最後に、ひとつ付け足しを。

 

労働災害の対策として「注意喚起」と並んで含まれることが多い手法。

「教育指導を徹底する」

 

これだけでは不十分ということは、あなたはもうおわかりですね。

 

「注意」も「教育」も個人頼みです。

安全な職場づくりは、各自の努力だけでは成し得ません。

 

職場・組織・会社という全体での取り組みが、安全な職場を作ります。

従業員個人任せにしない団体戦で、働きやすい環境を作っていってください。

 

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