【2026-⑬】安全は「三段階」 前後の視点で対策を立てる!
- 「社内で労働災害が連続して、防ぎきれない!」
- 「原因が特殊で、対策を取りにくい!」
- 「常に警戒を続けていては、仕事にならない!」
労働災害のない安全な職場を作ろうと思ったら、このような課題にぶつかることがあるでしょう。
「安全第一」はわかるけれど、常に警戒、いつも対策では本業に注力できない。
安全衛生の視点で考えれば、職場の安全のために力を割いてから本業に注力するべきなのですが、会社としては実践可能な現実解がほしいところでしょう。
本業を支障なく進めつつ、職場の安全も確保する。
そんな理想を両立させる妙案はあるのでしょうか。
今回は、この相反する理想を実現に近づけるための考え方を、私なりに述べてみます。
具体性には欠けるかもしれませんが、あなたの会社で応用できる知恵として受け取ってくれれば嬉しいです。
目次
1 労災は多段階
2 前後の視点
3 まとめ
1 労災は多段階
「労働災害を発生させず、安全な職場を作る」
この状態を作るには、労働災害の原因になる危険な状態や作業を職場の中に存在させないことが、ひとつの答えです。
「そもそもその行為をしない」
これならば危険は生じないし、ケガにもつながりません。
安全な職場づくりとして最上級の解と言えるでしょう。
が、これを実践しようと思ったら、「本業に支障が出る」という状態になります。
仕事という行為がある以上、大小の危険は必ず伴うものです。
全てを避けることは、事業を行う会社としては不可能でしょう。
そこで、「段階をつける」という視点を持ってみます。
ここでいう「段階」とは、「労働災害を防ぐ段階」のことです。
念のため述べますが、これは「労働災害のフェイズ」とか「危険のレベル」ではありません。
- 危険な状態を避けるタイミングは、
- ひとつの行為の中に複数あって、
- そのどこかで安全を確保して労働災害を回避する、
という考え方です。
ひとつの危険を唯一のチャンスで回避しようと思うと、考え出すだけでひと苦労でしょう。
選択肢は限られ、実践するには制限が多く、使い勝手が良くない。
効果が出るか定かではない上に、その方法で危険を回避できなければ負傷に直結・・・。
何ごとも、「唯一の方法」というのは難易度が高く、機能しなかったときの代償が大きくなりがちです。
こうならないために、ひとつの危険に対して複数の方法を用意して、危険を回避するチャンスを広げるのです。
そしてそれは、手段ではなく「段階」で考えます。
作業の中のひとつの危険に対していくつかの回避行動を用意するのではありません。
これをすると、これもまた難産になってしまいます。
そうではなく、ひとつの作業の各段階で安全策を用意して、そのどこかで危険を回避する、という視点で考えてみてください。
この視点で安全策を考えると、各段階で1案しか思いつかなくても、段階ごとに策を取っていれば、それは複数案で安全策を講じたことと同じになります。
段階が違うと、方法の性質が異なるので思考が硬直せず、発案もしやすくなるはずです。
対策に行き詰ったときの突破口になるかもしれません。
労働災害の根本原因の解消が困難に感じたときには、「防ぐチャンスは一度きりではない」と開き直ってみましょう。
その前後の段階で、危険を避ける可能性に気づきますよ。
2 前後の視点
防ぐための段階は、三つ。
- 事前
- 最中
- 事後
です。
言葉から、なんとなく意味もつかめるでしょう。
それぞれを、単純な例で確認します。
- 事例
オフィスのレイアウト変更で、デスクとラックの間に手を挟み、右手の薬指と小指を負傷した。
事前(危険を回避する)
この場合に取る「事前」の対策は、
- 什器の運搬は台車を使い、手で持たない。
- 什器は押し方向で動かし、移動先に手や体を入れない。
などが考えられます。
「手を挟む」という状況をそもそも作らないことで、危険を回避する対策となります。
もっと事前の対策として、レイアウト変更の開始前に管理監督者が朝礼などで、作業の注意点を呼びかけも考えられます。
全員に意識を植え付けることも「事前」の対策になるでしょう。
「什器同士が近づかない順序で運ぶ」「そもそもレイアウト変更を必要とさせない」ということも、事前の回避になり得ます。
最中(危険を防止する)
この場合に取る「最中」の対策は、
- 什器運搬の際は皮手袋を着用し、素手で扱わない。
- 什器に緩衝材を取り付け、強烈な衝撃を伝えない。
などが考えられます。
手を挟んでも負傷しないように身体を保護し、危険を防止する対策となります。
ヘルメットやゴーグル、マスクや墜落制止ハーネスなどはそのための器具と言えます。
これらの器具を着用して「何かあっても守られる状態」を作ることが、「最中」の対策になるでしょう。
事後(結果を軽減する)
この場合に取る「事後」の対策は、
- 什器の中身を取り出して重量を減らす。
- 治療品を用意して応急処置に備える。
などが考えられます。
手を挟んでも軽傷でとどめる、または回復を早めるなど、労働災害の結果を軽減する対策になります。
この他に、危険な行動を取っている人を制止して、手を挟む直前で行為を止められるよう、管理監督者が監視役を務めるという方法も考えられます。
事前に防ぐことができなかった危険行動を、その場で止める態勢を作ることも、対策としては効果があります。
労働災害防止の三段階を単純な例で示すと以上のようになります。
ひとつの「手を挟む」という結果を防ぐための方法は、その前にも後ろにも取ることができるということです。
このように、前・中・後の状況ごとに対策を考えると、そもそも状況の性質が異なるから、発案の難易度も下がると思います。
手を挟む前と最中では、するべきことが全く違いますからね。
これが、視点を三段階で分けずに、手を挟んだ事実のみに焦点が当たると、対策の立案に迷走することがあります。
- 皮手袋ではまだ痛みが伝わるから、もっと頑丈なものを選定しよう。
→ハードプロテクターグローブを全員分購入
- オフィスのフロアマットが毛深くて、デスクを力いっぱい押したからだ
→フロアマット全交換
- デスクのキャスターの回転が固くて、勢い余ったからだ。
→デスクのキャスターをベアリングキャスターに交換
いかがでしょう。
このような迷走は、一例です。
あなたにも見覚えはありませんか?
「なんでこうなった?」という対策に。
ひとつの事実に対して複数の対策を取ろうと、無理にアイディアを捻出しようとがんばるから、このようなことに至るのです。
「対策を立てること」が目的になってしまうとこのような迷走に陥り、数を稼ごうとしてとんでもない対策も発案されます。
ひとつの事実に対して複数の対策を立てるのは、至難です。
視点を左右ではなく前後に動かし、段階ごとにするべきことを考え、迷走入りを防ぎましょう。
3 まとめ
労働災害を複数の段階で防ぐ。
今回は、事務職場での単純な事例を三段階で検討する方法を紹介しました。
これが工場の生産現場であれば、数十や数百の危険が内在し、数えきれない段階を経ていることでしょう。
その分、取るべき対策も膨大になり、ときに負担を感じるかもしれません。
けれど、本来は職場の安全のために力を割いてから本業に注力するべきです。
一日も早くこれらの対策を定型化して、日常でできる「いつもの行動」に仕上げましょう。
ふだんからできる行動を安全策として取っていれば、会社の中を「そもそも危険がない」という理想の状態に変えることもできるのです。
- 労働災害を防ぐには「事前」「最中」「事後」の三段階で対策を考える。チャンスは一度きりではない。
- ひとつの事実に焦点を当てると、対策が迷走する。視点を前後に動かして検討する。
- いつもの行動を安全な行動に。日常的な取り組みで社内を危険のない状態に変える。
最後にひとつ付け加えを。
今回紹介した「三段階」の検討方法は、労働災害だけでなく、ミスやヒューマンエラーの防止にも活用できます。
危険と同じで、人間が何かするときには失敗や間違い、忘却はつきものです。
それらを防ぐ方法として、今回の「三段階」は有効に機能するでしょう。
社内のいろいろな局面で、今回の記事を応用してみてください。
