神奈川県大和市の社労士事務所 中野屋│労働問題の解決PRO

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【2025-⑤】残業はキャンセルできるのか 「義務」と「必要性」を見定めよう

「残業キャンセル界隈」

少し前に世の中に出現した言葉です。

「時間外労働(残業)をしないこと」を指す言葉のようで、その発生源や意味、解釈などがインターネット上で様々に考察されています。

 

この言葉には、私が想像するよりも奥深い解釈が存在するようなので、私には詳述できそうにありません。

 

ですが、これは会社が直面する現実的な課題でもあるので、少し別の角度から考えてみました。

 

会社で働く上では避けて通るのが難しい「残業」という労働は、どのようなしくみで発生しているのか。

 

残業を命じる経営者のみなさんは、どのような命令が有効とされるのか。

残業を命じられる働くみなさんは、どのような命令に従わなければならないのか。

 

「残業キャンセル」という言葉が生まれたことを機に、会社が命じる残業の有効性について考えてみます。

 

今後のみなさんの働き方の役に立ててくれたら嬉しいです。

 

 

目次

1 「正式な残業」になるには

2 「正式な残業」を拒むには

3 まとめ

 

 

1 「正式な残業」になるには

 

会社が従業員に対して時間外労働(いわゆる「残業」)を命じるには、

・時間外労働協定の締結

・就業規則の整備

・労働契約での取り決め

などが必要とされています。

 

これらが整備されていない状態では、一日8時間を1分だって超えて働かせることはできません(原則)。

 

逆に、労使協定や就業規則が正しく整備されていれば、残業の指示は正式な業務命令になります。

残業を命じられた従業員には、その業務の完成と同じくらいに、残業をする責任を負うといえるでしょう。

 

もちろん会社には、従業員に残業を命じるための業務の必要性が求められます。

仕事を進める必要がないのに、「残業は命令だから」と言って強制することは、正当な命令ではありません。

 

その日のうちに、仕事をなるべく先に進める必要があるから残業する。

当たり前ですよね。

 

・残業をするための制度を整えてある

・残業をして仕事を進める必要が生じる

・その仕事を進めるため、会社は残業の命令を従業員に出す

・命令・指示を受けた従業員は、残業をしてその仕事を進める責任を負う

 

これが、通常の残業の構図とされています。

上記のうちいずれかが欠けている残業は、「正式な残業命令」として成立しない可能性があるので、命じる側の会社はご注意を。

 

 

2 「正式な残業」を拒むには

 

こうして発せられた正式な残業命令に応じず、キャンセルしたらどうなるか。

 

・命じた残業を拒む正当な理由があるかどうか

 

これにより、次の行動が分かれてきます。

 

「拒む正当な理由」とはどのようなものか。

・その日に残業しなくても、翌日以後に遅れを取り戻せる

・育児、介護、自身の通院により早く帰宅する必要がある

・医師から、長時間労働を避けるよう指示を受けている

・その他、その日その時間でなければならない事情を抱えている

 

考えられる理由としては、このようなところでしょうか。

日常生活を送っていれば、上記のような事情は起こりうることだと思います。

 

残業を命じられたみなさんは、その命令に応じられないときにはその理由をはっきりと説明しましょう。

 

では、「拒む正当な理由」がない場合は?

会社が取り得る行動は、順番で次のことが考えられます。

・その残業の必要性を説明し、協力を要請する

・命令拒否を考慮した人事考課の評定を行う

・命令拒否を理由とした懲戒処分を行う

 

いかがでしょうか。

「人事考課」とか「懲戒処分」という文字が目に入ると、ちょっとビビりますね。

でも、制度上はこういった処置も、会社は取ることができるようになります。

 

実際には最初の「協力要請」が大半でしょうか。

要請に応じて協力してくれればそれで良し。

応じてくれなくても、評価を下げるとか懲戒するとかは、実際には少ないものと思います。

 

残業に協力しなかったことを理由に懲戒処分を下すとなると、それはそれで経営の体力を消耗します。

「懲戒は最後の手段」と考えておくのが、会社としても拒否した従業員としても無難です。

 

会社は、必要になった残業に協力してもらえるように、従業員に対してその必要性を丁寧に説明しましょう。

 

 

3 まとめ

 

残業に限らず、ある問題が生じて判断に迷ったときに、私がよく用いる有効な視点があります。

 

「その命令に従う義務があるかどうか」

 

会社が命令を出すとき。

従業員が権利を行使するとき。

それがどのくらい有効か、判断に迷うときは多々あります。

 

そんなときには、そこに義務があるかどうかを点検してみてください。

一つひとつ見定めていくと、明確な答えにたどり着くはずです。

 

残業の命令についても、同じことが言えるでしょう。

 

・この残業には必要性があり、従う義務がある

・自分には正当な理由があり、この残業に応じない権利がある

 

会社と従業員両者とも、その残業にどのくらいの義務が生じているのか、考えてみてください。

 

会社は、残業の必要性を従業員が理解できるように、日ごろからの意思疎通を心がけましょう。

懲戒処分を振りかざして従業員を従わせるよりも、ずっと穏便で効率的です。

 

 

そして、「残業キャンセル界隈」という言葉が出現した一因に、「働く側の仕事に対する責任感の低下」が挙げられているといいます。

 

命令・指示を受けたみなさんも、「この仕事を進める必要があるのだ」という責任を自覚しましょう。

 

正式な残業は従業員の義務となり、いわば「確定された予約」です。

予約に対しては、キャンセルポリシーを破らないように気を付けましょう。

無断キャンセルが続くと、ペナルティが課せられてしまいますよ。

 

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