【2026-⑧】夜のお付き合いは「仕事」か? 労働時間の扱いを定義しよう
近ごろ(2026年1月)、「接待」という言葉がニュースで大きく取り上げられています。
このニュースでは労働問題との関連は報じられていませんが、これをきっかけとして、ここでは接待と労働時間について考えてみます。
近年、特にコロナウイルス流行以後では、夜の接待や接待ゴルフなどは一時代よりは減少していると聞きます。
商談や契約の際に、相手方と飲食を通じて親交を深めてビジネスを有利に進めるという手法が非主流になりつつある、ということかもしれません。
私も労働組合時代に、役職者として「懇親会」という場に参加していた時期がありました。
そういった経験をして、他社や他団体の人と仕事以外の時間を共に過ごす意味は決して小さくないと実感しています。
営業職や交渉役に付いている働くみなさん、近頃の動向はいかがでしょうか。
夜遅い時間や休日に行われることが多い、接待。
- 夜や休日の接待は労働時間か。
- どのようなことをすると労働時間になるのか。
経営者のあなた。
これらの線引きは明確ですか?
曖昧のまま、なんとなく従業員を接待に従事させていたら、もしかしたら賃金を巡る争いが起きてしまうかも。
今日ここで、接待に引くべき線を確認して、将来の対立を回避しましょう。
目次
1 曖昧は争いの元
2 認識を一致させる
3 まとめ
1 曖昧は争いの元
接待と労働時間の線引きが曖昧だと、何が起こり得るか。
接待の時間分の賃金請求
これが生じる可能性があります。
「他社との接待は会社の仕事のひとつなので、賃金が発生している」という考えが理由と思われます。
営業職として、相手方と商談を行っている
↓
会社から、相手方との会食(接待)を指示される
(これも営業職としての仕事だ!)
↓
双方の就業時間後に、相手方と会食(接待)を行う
(夜遅くまで仕事に拘束された!)
↓
今回の会食は、労働時間ですよね。
残業扱いになっていませんが、なぜですか?
会社の認識では、会食(接待)は相手方と懇親を深めるための食事の時間。
だから労働時間ではない。
営業職本人の認識では、接待は会社の指示による仕事であり、その時間は仕事として拘束されていた。
だから労働時間に当たる。
この両者の認識の違いが対立して、接待の時間の賃金を巡る紛争に発展してしまうのです。
これに加えて、時間外労働や深夜労働の割増率まで俎上に上がったら、会社は対応に大きな体力を費やすことになります。
接待や会食は、会社の事業として直接的な業務ではないためか、その定義や位置づけが曖昧なままであることが少なくありません。
お料理を食べる、お酒を飲む、楽しく盛り上がるなどの要素を含むことから、接待や会食を過小評価してしまいがちですが、曖昧さを放置した悪影響は重大であることを忘れないでください。
2 認識を一致させる
夜の接待は労働時間には当たらない。
これが原則です。
- 両者の懇親を深めることが目的であること
- 飲食が中心であること
- その場で具体的な業務や作業が伴わないこと
などが、その理由です。
判例(高崎労基署長事件など)の言葉でいうと、
- 事業運営上緊急のものと認められ
- 事業主の積極的特命がある場合
に、接待は労働時間と認められうる、とされています。
飲食店のテーブルの上で、商品の資料説明や契約書の締結が行われれば、それはもう「具体的な作業」となり、労働時間とみなされるでしょう。
会社が従業員に対して接待や会食、懇親会への出席を命じる場合は、上記の要件の有無をよく確認しましょう。
その上で、「今回の接待は労働時間ではない」という認識のもと、従業員に指示を出してください。
その接待や会食の場で何を行う予定なのか、会社なら事前にわかるはずです。
理想は、就業規則などにこれらの要件を明記することです。
会社の大元のルールに接待の時間の扱いが定められていれば、会社と従業員の両者が合意の上でその場に臨めるので、後々の争いを避けることができます。
認識の一致が争いを回避させます。
会社は従業員に対して、接待や会食、懇親会の定義をしっかりと理解させてから従事させましょう。
これだけで、争いの可能性はかなり小さくできるのです。
3 まとめ
「これは労働時間ではないか」
このような疑問が生じる対象は接待の他にもたくさんあります。
始業前の着替えや職場の清掃
遠方への出張の移動
終業後の勉強や研修受講
それぞれについての私の見解はまた別の機会に述べたいと思いますが、同様の問題は代表的なものだけでもこれだけ挙がるのです。
経営者は、労働時間に対する認識が分かれがちな行為について、明確な見解を持ちましょう。
- 接待や会食、懇親会は労働時間にあらず。曖昧のまま放置せず、明確に定義する。
- 接待に対する労使の認識を一致させる。認識の食い違いは後に思わぬ争いにつながる。
- 会社として、接待に対する明確な見解を持つ。就業規則などで統一するのが理想。
今までとは逆に、経営者のあなたは「この接待は労働時間である」という指示を出せるでしょうか。
自信をもってはっきりとこれらの指示を使い分けることができれば、接待に関して従業員と争うことは今後もないでしょう。
どのようなことをすると、仕事になるか。
この視点を持って、大事な夜のお付き合いに臨んでください。
