【2026-⑰】「ユニオンショップ協定」② 労働組合が知るべきその「理由」と「心得」とは
前回の記事【2026-⑯】で、「ユニオンショップ協定」について、現代の労働組合が考えるべきことを私なりに述べました。
- まずは労働組合が、ユニオンショップ協定を理解すること。
- 労働組合は、責任をもってユニオンショップ協定を説明すること。
これらのことを組合活動の中で重要視するべきである、という内容でした。
前回の記事では、ユニオンショップ協定の何を理解して、何を説明するべきかについて触れていませんでした。
今回は、労働組合が知るべきこと、組合員に伝えるときの心得を具体的に述べます。
これらの内容は私個人の意見であり、学説や定義に背いた考えも含まれているかもしれません。
あなたの組合の活動や性格に合わず、私の意見をそのまま取り入れたら支障をきたす可能性もあります。
ご自分の組合活動に取り入れる際は、自身の組合に整合するかどうか、事前によく検証してから実践に移してください。
何ごとも、「丸うつし」は良い結果を生みませんから。
目次
1 理由を知る
2 説明への心得
3 まとめ
1 理由を知る
- 会社に入社したら、組合に加入(自動・強制)
- 組合を脱退したら、会社を解雇(自動・強制)
一見すると労働者にとって酷で強権的な、現代では考えにくい前時代的なこの協定。ユニオンショップ。
会社に入社したら自分の意思にかかわりなく労働組合に加入し、「組合費」という数千円の金額が自動的に給与から源泉徴収されていく。
組合を脱退したら、自分の意思にかかわりなく会社も解雇。
「労働基準法や労働契約法があるではないか!」と、抗議の声が湧き上がりそうです。
「こんな協定、無効だ!」
そう見えるユニオンショップ協定が法的に有効とされ、現代でも労働者の重要な権利として認められているのはなぜか。
労働組合が第一に理解するべきは「理由」です。
私が思う、二つを挙げます。
①「仲間外れ」「特別扱い」を生じさせない
入社した従業員を例外なく組合に加入させるユニオンショップ協定は、
「会社に入社した従業員をすべて、労働協約の範囲に加えるため」
に締結されます。
組合員には労働協約が適用されますからね。
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労働協約が適用されれば、その全員が同じ条件で働くことになります。
そうなると、労働条件において全員平等。「仲間外れ」や「特別扱い」が生じなくなります。
労働契約の合意により、協約より有利な条件の設定も可能(労働契約法第10条)ではありますが、会社としては雇用管理上、従業員の労働条件は統一されている方が合理的でしょう。
組合としても、同じ組合員という立場の中で「優位」「劣位」が生まれることは、その後の組合運営の火種となり得ます。
組合にとっても、全員の平等・均衡は企業内平和のためには望ましいはずです。
②組織力の強化
入社した従業員が例外なく組合に加入すれば。
誰かが入社するたびに組合員の人数が増えていきます。
毎年4月に新卒一括採用している会社の組合は、その試用期間後に新入社員が組合に加入するのが一般的ではないでしょうか。
順調に採用ができている会社の組合では、毎年春から夏に組合員の人数が増えていく構図です。
労働組合は、所属する組合員数が増えるほど「組織力が強化する」とされています。
その会社の全従業員に占める組合員率が高まり、社内で組合員が多数派になるからです。
組合員率が高まるほどに、「労働組合は従業員の代表」という主張にも真実性や説得力が伴ってきます。
例えば、組合員率が8割の労働組合が会社の方針に反対した場合、「100人の会社では80人が反対している」のと同等の圧力を持つことになるのです。
数は力、ではありますが、それ以上に「団結は交渉力」になります。
労働組合は古来より、交渉力を高めるために人数増加に余念がありません。
たとえ会社とは対立せず、協調主義の組合であっても、組合員数の増加は権利擁護のための主目的のひとつです。
労働組合の執行部は、まずはこの二点を認識し、ユニオンショップ協定の重要性を共有しましょう。
これらをしっかりと自分のものにしておくと、新入社員だけでなく、今いる組合員や会社の管理職に対しても、説得力持った説明と主張ができると思います。
2 説明への心得
労働組合への加入に疑問を覚える組合員に対して、先ほどの二点を説明すればそれで理解してくれることもあります。
どんな反対論者も、必要性や利点が明らかになれば主張を和らげてくれるものです。
強硬な反対意見はなぜ生じるのか。
次は、組合員に説明するときに、組合として心得ておくべきことを記します。
①加入の利益
人の心を左右するのは、メリット・デメリットの存在です。
自分の行為に対して、利益が上回るのか、下回るのか。利益が上回るから、人はそれを選びます。
負担に対する利益が小さいとき、人はそれを拒み、ときに忌避します。
労働組合への加入に疑問を持つ組合員は、組合に加入している利益を実感できていないと思われます。
組合費の徴収、職場内での配布物、会議や集会への参加・・・。
負担ばかりで、良いことがない。
そう思われている可能性があります。
加えて、「会議で発言しても、自分の意見が反映されない!」と感じたら、組合加入の利益どころではありません。
脱退だけでなく対抗意識まで芽生え、組合員同士による「労労対立」に発展してしまいます。
内部対立を防ぐためにも、組合員には、「労働組合に加入する利益」を十分に伝えることが重要です。
組合員が、組合活動を「利益のために必要な負担」だと理解してくれれば、脱退や対立の意識も芽生えません。
②「ブラックボックス」
人は、わからないものには疑念を抱き、理解不能のものには恐怖を覚えます。
あなたの組合は、活動が組合員に伝わっていますか?
「組合のブラックボックス化」は、組合員の心を離してしまいます。
「組合が何をしているかわからない」と組合員に思われないためにも、労働組合にとって透明性や情報発信は必須です。
機関紙は定期的に発行、会議の進行は双方向、意見や質問は随時受け付け。
丁寧な発信と対応で、組合活動を透明化しましょう。
わかりやすい広報は活動を身近に感じさせ、組合員が「自分事」と受け止めることを促してくれます。
これは私の意見ですが、発行する機関紙は「事実の発表」だけでなく、組合としての主観も混ぜられていると、より人間味があって好感を持てる印象です。
「温度を感じる」「実在感がある」と言いますか、文面からそんな雰囲気が出せると上出来でしょう。
組合からの情報発信が不足すると、組合員自身が接する情報によって、労働組合へのイメージが固まってしまう可能性があります。
インターネット上では「組合いらない」「組合はオワコン」「組合費は飲み代に使われている」など、無数の悪い情報が躍り出てきます。
何かの情報を欲しているときには、ついそういった刺激の強い見出しに目が移りがちになり、いつしか印象がそのように固定されることに。
このような情報の洪水に抗うためにも、組合自身が情報を発信し、事実に基づく印象を持ってもらう努力が欠かせません。
3 まとめ
途中、「数は力」のお話を出しました。
組合員率が高いほど組合は交渉力を持つ、と。
組合が力を持つことは会社にとっては脅威。これが一般的な認識でしょう。
けれど、組合員率が低下することは会社も望んでいない、というのが私の考えです。
もし、全従業員に対する組合員数が過半数を下回り、その会社の組合が「少数組合」になったら。
先ほどの会社の例で、組合員数が100人中40人にまで加入率が低下したら、その組合は会社の従業員代表とは言えなくなります。
組合員が少数派となれば、会社がその組合と結んだ労働協約や労使協定は効力が限定的となり、全社的な制度の統一はできません。
労働条件は社内で差異が生まれ、時間外労働の免罰効果も及ぶ者・及ばない者に分かれます。
会社としては、事業運営で大きな支障に直面するでしょう。
このような状況を、会社が望むとは思えません。
事業全体の平穏のためには、会社には過半数組合がいてもらわないと困る、ということになります。
ユニオンショップ協定とは、労使双方にとって利益がある制度なのです。
最後にひとつ、付け加え。
組合員からの疑問や意見は、組合として忌避せずに歓迎してあげてください。
組合員の疑問に答え、説明する機会を得るのです。
組合員の価値観を知る手がかりであり、組合の理念を広めるきっかけにもなります。
質疑応答の双方向性があることは喜ばしいことだととらえて、丁寧に応じてください。
その積み重ねが、きっと、組合の「組織力の強化」につながります。
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