【2026-24】”悪用”を防ごう! 実効力のある休職制度の整備
休職制度は、「働けなくなった従業員の解雇を猶予する制度」とされています。
それが時代が進むにつれて、「従業員の健康回復を支えるための仕組み」として認識されるようになりました。
この従業員を解雇から守るための制度が、悩みの種になることも。
現実では、制度が曖昧であるゆえに、休職が繰り返されてしまったり、復職の判断に迷ったり、経営者・管理監督者が疲弊してしまうケースが少なくありません。
私も、「制度の不備が会社の負担を増やし、従業員の回復を妨げる」という場面を目にしたことがあります。
精神的な負担から休職制度の重要性が増している今の時代。
法令と実務の橋渡しをしながら、現場で本当に機能する休職制度を整えることが、経営改善の一部として欠かせないと感じています。
今回は、休職者が多くて困っている企業に向けて、悪用されず、実効力のある休職制度を作るための視点をお伝えします。
1.制度の隙
①意図的に休職を繰り返す従業員への対応が難しい
制度が曖昧だと、
- 「診断書さえあれば休職できる」
- 「復職してもまたすぐ休職」
という“制度の隙”が生まれます。
結果として、現場の負担が増え、他の従業員の不満も蓄積します。
本当の傷病でなかなか復帰できない従業員には、会社として他の方法も真剣に考えなければなりません。
しかし、こうした”悪用”がクセになって、いつまでたっても本来の仕事に復帰しない従業員も出てくるでしょう。
②会社が休職を命じる基準が不明確
休職は、就業規則に定めた一定の基準に達したら半ば自動的に開始されるのが普通だと思います。
これ以外に、”会社が休職を命じる場合”もあるでしょう。
このとき、「どの状態なら休職命令を出すべきか」が曖昧だと、管理監督者は判断をためらいます。
その迷いが、トラブルの火種になります。
「なぜ自分が休職なんだ!」と、命じられた本人は納得せず、反発するかもしれません。
意識のズレはいつだって火種になるのです。
③復職の手順が現実的でない
復職の可否を“主治医の診断書一枚”で決めてしまうと、
- 復帰した際の負担の見定め
- 再発する可能性
- 本人の回復度合い
を十分に確認できません。
結果として再休職につながり、制度が形骸化します。
休職は、始めるよりも終わらせるときの方が難しいのです。
復職の制度が未完成のままでは、休職制度は十分に機能しません。
2.具体的な基準
①休職の「入口」を明確にする
休職の開始条件は、就業規則に具体的に書くことで悪用を防げます。
- 業務遂行能力が著しく低下している
- 医師の診断書に「就労不可」の記載がある
- 会社が必要と判断した場合は休職命令を出す
こうした“客観的な基準”が、制度の乱用を防ぎます。
”その人の事情に合わせた個別判断”で休職を命じるのは避けるべきです。
ましてや管理監督者の一存で決めてしまうのは慎みましょう。
さらに進んだ準備として、現場ごとの休職事例を考えておくことをおすすめします。
”この状況に至ったら休職”という、さらに具体的な基準があれば、実際の判断を助けてくれます。
②休職期間の上限と、繰り返し休職の扱いを定める
不備になりがちなのが、”休職の上限設定”です。
これがないと、条件に当てはまればいつまでも休職が可能になってしまいます。
- 休職は通算○年まで
- 同一傷病での再休職は○回まで
など、制度の限界点を明確に定めることで、無制限な休職の繰り返しを防止できます。
上限の回数や期間に法律上の決まりはありません。
あまり短期間に設定すると”従業員の保護が不十分”とみなされる可能性がありますが、過度に手厚くするのは会社の負担。
会社が不利益を被らない程度に設定しましょう。
③復職の「出口」を段階的に設計する
復職は“主治医の診断書だけ”で判断しないこと。
もちろん、本人の主張だけで決めるわけにはいきません。
- 主治医の意見書
- 産業医の面談
- 試し出勤(短時間勤務)
- 本復帰の可否判断
このように段階を踏むことで、再休職防止と現場の安心感を確保できます。
復職の基準を細かく設定することで会社側の判断の助けになってくれます。
本人の納得感も高められるでしょう。
ただし、復職の条件が厳しくなるので、内容は慎重に検討してください。
休職制度の目的は、”元どおりの復帰”です。
”休職満了で退職”ではありません。
④復職不可の場合の選択肢を明記する
”休職満了で退職”という結果は避けるべき。
先ほどそのように書いたばかりですが。
期間内に復職できないこともあるでしょう。
就業規則には、その場合のことも想定して制度を含めておかなければなりません。
復職が難しい場合の扱いを規定しておくことで、会社も従業員も“次の一手”を迷わずに進められます。
- 退職
- 自然退職
- 配置転換
現実的には”原籍より軽作業または別の部署に配置転換”という方法が取られます。
判断を迷うことなく実行するためにも、この場合も具体的な想定事例をいくつか用意することをおすすめします。
⑤休職中の状況の把握
忘れてならないのが、休職者が”療養に努めているか”の確認。
そのためにも会社は、休職中の従業員の状況を把握しましょう。
休職中(つまり療養中)の人に連絡を入れることには、ためらいがあるかもしれません。
しかし、休職しているからには、その人が復職のために療養に努めるのは休職者としての義務とも言えます。
雇用主として、その義務を果たしているかを把握することは、決して無理のある話ではありません。
休職者を放置せず、連絡を取り合って、その人の状況を把握しておきましょう。
ただし、何の前触れもなく療養中の人にいきなり連絡を入れるのは酷。
従業員が休職を開始する際に、
- 定期的に会社に状況報告を入れること
- 必要により会社から状況確認の連絡を入れることがある
などを盛り込んだ通知文書を渡して、本人に認識させておきましょう。
「会社から連絡があるかも」とわかっていれば、休職者も心の準備ができるでしょう。
しっかりと、復職に向けて療養に励んでくれるはずです。
3.まとめ
休職制度は、従業員を守るための仕組みであると同時に、会社の経営を安定させる仕組みでもあります。
制度が曖昧なままだと、現場の負担が増え、経営の安定性が揺らぎます。
逆に、明確で実効力のある休職制度は、会社の基盤を強くする「経営改善の一部」です。
法令と実務の間には、どうしても“すき間”が生まれます。
私も社労士として、そのすき間を埋めるべく、日々努力しています。
明確な休職制度は、会社の労務管理の大きな基礎。
もし「うちの制度はこのままで良いのか」と感じられたら、ぜひ一度ご相談ください。
現場の実情に合わせて、無理なく運用できる制度づくりを一緒に考えていきます。
